
高齢者のてんかんについて
高齢者のてんかんとは?
てんかんの発症率は子どもと高齢者で高くなりますが、最近では高齢での発症する方が多くなってきています。高齢者てんかんの症状は認知症と間違われ易いため、てんかんと気づかれず治療されていない方が多い可能性があります。今後、高齢化が進むことで高齢者のてんかんも更に増加すると推測されています。
<年齢別てんかん発症率>

(出典:Epilepsy in older people. Lancet 2020; 395:735.から引用し改変)
高齢者てんかんの原因
高齢者のてんかんは、脳卒中(脳出血、脳梗塞)の後遺症、脳炎などの炎症性疾患、認知症などがありますが、半分以上は特に病気の無い方が占めています。

(出典:Clinical characteristics and treatment responses in new-onset epilepsy in the elderly. Seizure 2013;22:772.から引用し改変)
認知症とてんかんの関係
ARICコホート研究という認知症とてんかんとの関連を調べた研究があります。認知症患者のてんかん発症率は、健常者と比べて2.7倍、67歳以降にてんかんを発症した42%が認知症を合併していました。さらに、てんかん患者は健常者と比べて認知症発生率は3.1倍、てんかん発症から認知症合併までの期間は約3.66年短かったという結果でした。このように認知症と高齢発症てんかんはお互いにリスク関係にあると考えられます。
(出典:Dementia in late-onset epilepsy: The Atherosclerosis Risk in Communities study. Neurology 2020;15:3248)
高齢者てんかんの症状
高齢者のてんかんは頭の横(側頭葉)由来の焦点性てんかんが多いです。発作は若年者のようにわかりやすい全身性の痙攣ではなく目立たない症状が特徴です。ボーっとして無反応で動きが止まる、一点を見つめたまま、自動症(口をもぐもぐ、ぺちゃぺちゃする、手で周りの物をまさぐるなど)があります。発作は数分間が多いですが、発作後もうろう状態が数時間から数日続くこともあるため認知症と勘違いされることがあります。発作がわかりにくいので同居者の方がスマートフォンで動画を撮影してくださると診断の手掛かりになります。
他に特徴的な記憶の障害もあります。加速的長期健忘(一旦は覚えていたが数日後に忘れるという記憶の定着の障害)、自伝的健忘(人生の大事なイベントを思い出せないなど遠隔記憶の障害)、地誌的健忘(慣れ親しんだ道や風景が一時的にわからなくなる)があります。日内変動(1日の中で記憶があいまいな時間の変動がある)、若年者の発作と違って目をつぶっている発作もある、自律神経症状が多い(発作前後に発汗、動機、気分不良)なども高齢者てんかんの特徴です。

(出典:高齢発症てんかんと認知症 老年内科2021;4:98-106、図は科学評論社から転載許可)
高齢者てんかんの診断
診断には病歴(症状や普段の様子との違い)と脳波検査が最も重要です。しかし、高齢者てんかんに対して脳波検査で異常波を見つけられる感度は30%から70%と報告によって様々です。よって1回の検査でてんかんの異常波が無かったからと言って、てんかんではないとは言い切れませんので、疑わしければ繰り返し脳波検査を行うことが必要です。長時間の脳波検査と動画撮影を組み合わせる長時間ビデオ脳波検査を行うことによって、よりてんかんの異常波や発作を捉えることが可能になります。
(出典:標準的神経治療:高齢発症てんかん 日本神経治療学会)
高齢者てんかんの治療
治療は抗てんかん薬の内服ですが、若年者にくらべて少量の投薬で奏功することが多いです。高齢者は合併している複数の疾患のために多くの内服薬を飲まれていることが多いため、薬物相互作用に注意しながら投与量を調整していきます。